奥飛騨だより

神岡祭(2009.5月号)

2009年5月号

春の風物詩である桜は4月初めから中頃に咲き、いまはもうほとんどが散ってしまいました。 しかし、今度は青々とした葉が桜の木を包みつつあります。 そんな中、飛騨市神岡町では春の祭り、神岡祭が開催されました。 今月はその様子をお届けします。

神岡祭は、毎年4月の第4土曜日に開催され、高山祭・古川祭と並び、飛騨三大祭と呼ばれています。 その特徴は、なんといっても大行列。高山祭が「絢爛豪華な屋台」、古川祭が「起し太鼓」ならば、神岡祭りは「大行列」です。 多くの神岡町民からなる大行列は「船津の行列祭」とも称されるほどの勇壮さ。 行列の先頭から最後まで通り過ぎるのに、優に30分はかかります。 決して広くはない神岡町内をこの大行列が練り歩くわけですから、この日ばかりは町全体が祭独特の雰囲気にどっぷりとつかることになります。

神岡の町を取り囲むように鎮座する大津神社、朝浦八幡宮、白山神社の三社が同日に例祭を行うのが神岡祭の全容です。 それぞれの例祭は、その起源が異なるようですが、何れも歴史は古く、中でも大津神社の行列は300年前には既に存在していたといわれています。 祭の中核をなす行列は、獅子舞や闘鶏楽、豊栄の舞など、代々人から人へ伝えられてきたもので構成されています。 そう考えると、3月下旬からの太鼓や笛を練習する音さえ、祭そのものと同じくらいに貴重なもののような気がします。

沢山の練習を積み、あとは4月25日の本祭を待つばかりだった大行列の面々ですが、 今年も天候に恵まれず行列は翌日に順延となってしまいました(実は昨年も一昨年も雨で順延になっています)。 26日も依然として雨模様、町内では空を不安げに眺める人の姿が目立ちました。 そんな中でも祭の準備は粛々と進められ、三社の一つである大津神社には行列を為す人々が続々と集結していきます。 傘を差した観客たちも自然と沿道に集まりだしました。そして、正午半過ぎ、ついに太鼓の音とともに、大行列が始まりました。

雨の中を行列がゆっくりと動き出すと町中の視線は行列に注がれます。 カメラを片手に、行列と共に移動する人もいれば、その場にとどまって行列の行く末を見守る人もいます。 道路沿いの民家からは、二階の窓という地元住民ならではの特等席から家族で祭の様子を眺める姿も見られます。 行列の最初は小さな子供達が多いですが、序々に年齢層が上がっていき、後方には大きな神輿を担いだ屈強な男たちが控えています。 神岡祭の伝統を受け継いできただけのことはあり、年季と迫力が感じられます。

今回ご紹介したのは神岡祭のほんの一部に過ぎません。 この後、夜の祭が控えています。こちらの盛り上りは相当なものです。 是非一度、直にご覧いただきたい祭です。

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