奥飛騨だより

飛騨の里

2009.2月号

 真冬である2月は寒さもピークに達します。特に冷え込みが厳しい日などは、日没と共に通りから人の姿が消え、町中であっても閑散とした雰囲気に……。それでも、夜の澄んだ空気を楽しみたい方の為に、飛騨地方の各所ではライトアップが行われています。

 高山市の中心部からほんの少し離れた場所にある「飛騨の里」。ここでは飛騨の原風景を凝縮した景色を見ることができます。特にこの時期は、写真のように全てが雪に覆われており、家屋が何故この形でなければならなかったのか、といったことが一目でわかります。
 池には薄い氷がはっている様子が伺え、夜の冷え込みの厳しさを物語っています。雪のない時期には、この池に飛騨の里のマスコットとも呼べる水鳥が泳いでいたと思いますが、彼らはどこへ行ってしまたのでしょうか。ミステリーです。

 冬の夜は地面が凍りますから、非常に滑りやすい状態になります。歩き方も自然にペンギンのようになってしまい、目線は常に足元に集中しまいがちに。まして飛騨の里には傾斜した道が多いですから、なおさらその傾向は強くなります。でもそれではせっかくの景色が楽しめませんね。そんなときのために、右の写真のような縄が用意されています。この縄を靴に巻きつければ、簡易式の滑り止めの出来上がり。これだけで驚くほど滑りにくくなります。見た目はともかく、実用的な知恵といえるかと思います。

 色々と歩き回っていると体が温まってきます。もっとも、耳や鼻が千切れそうな寒さに変わりはありませんが……。
かじかむ手をさすりながら、合掌造りの軒下から一枚撮ってみました。氷柱がずらり並んでいます。大きいものでも数十センチ程度で、飛騨地方の氷柱としては小ぶりな方ではないでしょうか。もっと成長(?)すると、地面に届いてしまうこともありますが、そのまえに人の手で折られてしまうことが多いようです。万一、人の頭に落ちると危ない、という理由からでしょう。それにしても屋根が分厚いですね。

 ライトの色は時間の経過と共に次第に変化していきます。確認できたのは白、緑、青、赤の四色でした。写真は赤色のときですね。なんだか、怪談的な雰囲気がなきにもあらず、といった印象を受けます。
 冬の怪談といえば雪女のお話が有名だと思いますが、どうでしょう? 厳しい冷え込みも相まってか、雪女が出てきてもちっとも不思議ではない気がします。ライトアップされている場所自体は明るいものの、少し視線をずらせば闇に沈んだ森が広がっているという、飛騨の里独特の環境のせいかもしれません。

 今回は飛騨の里ライトアップの様子のみをお伝えしましたが、高山の中橋や、白川郷でもライトアップイベントが行われています。調べてお出かけしてみてはいかがでしょう。

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