奥飛騨だより

天生(あもう)県立自然公園でトレッキング(2009.7月号)

2009年7月号

6月になると山の木々は葉が生い茂り緑一色の世界が広がります。
山で囲まれた飛騨地方は緑を体全身で感じられる場所が数多く存在しますが、今回はその内の一つ、天生(あもう)県立自然公園をご紹介します。

天生県立自然公園は、飛騨市と白川郷とを結ぶ国道360号線近くにある自然公園です。標高1300メートルから1700メートルほどの高さにある園内には、日本の重要湿地500に選定されている天生湿原やブナの原生林など、人にあらされていない自然そのものの貴重な風景が今も残されています。
国道360号線が冬季期間(例年11月末頃から5月末頃まで)は閉鎖されているため、開通直後となるこの時期には多くの方がここを訪れています。

登山口から早速、急な坂道が続きます。あまり整備されていない山道は、アスファルト舗装の道路に慣れきっていると、なかなか難儀な道です。この日は、6月中旬だったこともあり、6月初旬に見られる水芭蕉が咲き誇る風景はほとんど観られませんでしたが、代わりにとても珍しい高山植物を見つけました。それが右の写真の植物、ムラサキヤシオツツジです。紫というよりは赤に近い色をしていますね。それほど大きくはない花ですが、この色は新緑の中でとても目を引きます。

登山口から歩き始めて1時間も経つと、湿原を抜けブナやカツラの原生林の森へ入ります。なかには樹齢百年を優に超えるような巨木もあり、大人数人が両腕をいっぱいに伸ばしても囲みきれそうにないほどの幹の太さを誇っています。実際には試していませんが、この時期の木々は成長が著しいため、幹に耳を当ててみると地面から水を吸い上げる音が聞こえるそうです。皆さんも機会があれば手近な木で試してみてはいかがでしょうか? 

標高が高くなるに従い、広葉樹が主だった木々も、少しずつ針葉樹が混じり出します。 道の勾配もより厳しくなり、道幅も狭く頼りなくなってきました。この道は、北アルプスの眺望が素晴らしい籾糠山の山頂まで続いており、是非観ておきたい景色だったのですが、生憎この日は天候が崩れ雨が降ってきてしまいました。雨具の準備をあまりしてませんでしたので、今回は山頂まで行くことは断念。山の天気は変わりやすい、という言葉は本当だな、と実感しました。

天生自然公園は夏から秋にかけてニッコウキスゲやササユリ、エソリンドウ等様々な植物が見ごろを迎えます。 10月下旬には紅葉も見ごろになるそうです。

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