奥飛騨だより

鮎の刺し網漁

2009年10月号

街中の店先には秋の味覚が並び、郊外では夕暮れとともに鈴虫の鳴き声が聞こえるようになりました。 夜はすでに肌寒いですが、この時期飛騨地方では『鮎の刺し網漁』が最盛期を迎えます。今回はその様子をお伝えします。

鮎の刺し網漁は、網を川の対岸まで数枚仕掛け、その網に向かって魚を追いたて絡めとる漁法です。
写真は漁で使用する「刺し網」です。持ち運びしやすいように、刺し網の上部には持ち手がついています。
網自体はナイロンの糸でできているため軽そうに見えますが、 川の流れに負けないように錘がついており、かつ網自体も長いため結構な重さがあります。
この刺し網を川まで運ばないといけないので準備段階から結構な運動になります。
さていよいよ刺し網漁の開始です。

夕刻のうちに網を数十メートル間隔で仕掛けたら、できるだけ大きな石を川に投げ込みます。 この投げ込んだ石の音や衝撃で魚が驚いて逃げ、網にかかるというわけです。
多くの鮎を捕まえるために、この石投げは網から離れた場所から徐々近づくように行います。 魚の反応が悪いときは、大きな音がする爆竹なども川に投げ込むこともあります。
漁が成功すれば網を上げたときに大量の鮎が網に引っかかっている様が見られます。

今年は水苔が多く川に残っていたため、網に必ずといっていいほど絡ってしまいました。 そうすると苔のせいで網が魚にばれてしまい、なかなか掛かってくれません。
例年であれば一回の刺し網でもっと多くの鮎が捕れるらしいのですが、今回は仕掛けた網5枚で30匹しか捕れませんでした。
網には鮎だけでなく、ウグイやニジマス、ヤマメ、ときには鯉も掛かることがあるそうです。 重い網に大きな魚がかかるわけですから引き上げるのにも一苦労です。

捕れたての鮎を早速いただくのは「食欲の秋」の楽しみです。
鮎の塩焼きといえばやはり屋外での炭火焼が定番です。 自分でとった鮎を調理し食べるのですからその味はまさに格別!! 炭火で焼くとあたりは香ばしい匂いに包まれます。
余分な脂が落ちることにより鮎本来の味が引き立ちます。 焼きあがったら、一旦身を指先でほぐし頭から引っ張るときれいに骨と内臓が取れます。これは鮎独特の食べ方のようです。
鮎を魚に日本酒なんてのもいいですね。

自然豊かな飛騨地方でも年々川が汚くなっているという話を時折耳にします。
何年経っても、鮎やヤマメといった魚と出会えるような川であってもらいたいものです。

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