奥飛騨だより

宇津江四十八滝(2010.7月号)

2010年7月号

梅雨が明け、全国各地では海開きなどの夏らしい話題がよく聞かれるようになりました。残念ながら、飛騨地方は海に面していませんが、涼を感じられる場所は沢山存在します。今回ご紹介する高山市国府町の宇津江四十八滝もそんな場所のひとつです。

実は宇津江四十八滝をご紹介するのはこれで二度目になります。前回ご紹介したのは2009年1月でした。そのときは真冬にもかかわらず雪が極端に少なく、茶色い落ち葉だらけの少し寂しい風景でした。しかし、今回は夏ということもあり、どこも生き生きとした緑に包まれています。水量も豊富で、滝壺に大量の水が飲み込まれていく様は、視覚的にも聴覚的にも涼感たっぷり。同じ場所でも季節によって全く異なる表情を持つことに驚かされます。

視覚的、聴覚的な涼という意味では申し分の無い宇津江四十八滝ですが、全ての滝(13つの滝があります)を巡るのはなかなかに骨が折れます。というのも、多くの滝が密集しているだけに、一番下流の魚返滝から上平滝まではかなりの標高差があるからです。体力に自信のない方は、各滝で足を止め、自分のペースで歩かれるのが良いと思います。また、訪れる時間帯としては、早朝がお勧めです。飛騨地方の朝は涼しいため、きっと快適な散策になると思います。

早朝に訪れることで、得をすることは他にもあります。それは人の気配が皆無だということです。通常、このような観光地には多くのが人々が訪れますから、自然の中に身を置いていても、周囲に人がいない、という状況にはなかなかなりません。もちろん、近くに人が居ることは安心にも繋がりますから、悪いことばかりではありませんが、時には喧騒を忘れて自然に浸りたくなるときもあるのではないでしょうか。そんなときにちょうどいいのです。 

多様な滝が連なる宇津江四十八滝の散策は、ともすれば滝そのものばかりに注目してしまいがちです。でも、ときどき目線を変えてみるも良いのではないでしょうか。例えば、上を仰ぎ見れば、生い茂った枝葉が日差しを優しく遮ってくれているのがわかりますし、その枝葉を辿れば、今度は思いのほか立派な幹に行き着きついたりします。それらの木々の合い間からは、これは運がよければですが、野生動物の姿を見かけることだってあるかもしれません。

夏はまだ始まったばかりで、これからも当分は暑い日が続いていきます。涼を求めて様々な場所へ、多くの人々が訪れることと存じます。定番の観光地は大勢の人で賑わうのでしょうが、あまり知られていない自分だけのお気に入りの場所を探してみるのも良いかもしれませんね。

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