奥飛騨だより

太子踊り(2010.8月号)

2010年8月号

夏真っ盛りですが、皆さん、体調など崩さずお過ごしでしょうか?
さて今回は、飛騨市神岡町吉田地区で行なわれた『太子踊り』の様子をお届けします。
この踊りは、幾多の天然記念物や重要文化財があり、神岡町民なら一度は訪れたことのある吉田常蓮寺(龍洞山太子堂常蓮寺)、通称“常蓮寺(じょうれんじ)”にて、毎年7月24日に行なわれています。

このお寺は山の中腹に建立されており、境内まで辿り着くまでに100メートル近い坂道を登り、さらには約100段もの階段を登らなければなりません。

町内の高校生は部活で体力づくりの一環でよく訪れており、坂道を駆け上がる光景がみられましたが、今回私は、炎天下の中一歩ずつゆっくりと登りました。

坂道を登り終え一息つき、石段を登り始めると左手に大きな杉の木が天を突き刺しそうな勢いで伸びていました。太子踊りへ来た子供達と一緒に大きな杉と“パチリ”。その大きさがお解りでしょうか。また、幹の根元近くには穴があいており、大人ひとりぐらいなら、スッポリと入ってしまうくらいの大きさでした。これは“身隠し杉”と呼ばれ、岐阜県の天然記念物に指定されています。

日が落ち、周りがすっかり暗くなると、境内の中央に建てられた櫓から三味線や笛の囃子と共に、見事な唄声が聞こえました。
  ♪ありゃ見事なお太子桜
    元は吉田の常蓮寺
     枝は釜崎 葉は朝浦(あそら)
      花は船津の町で咲く♪
“太子踊り”は、約380年前から続いており、岐阜県の無形文化財に指定されています。
太子踊りの由来は、寺伝によりますと、 その昔から、聖徳太子像(木製)が安置されていましたが、故あって越中(現在の富山県)のお寺に移されたそうな。その時にこの地域一帯が飢饉に見舞われ、住民達は太子像が他に移された祟りであると恐れおののき、この常蓮寺へもどしてもらうよう切に願っておりました。数年の月日が経ち、ようやくその望みが叶い、飢饉も止み豊作となり、これを喜び住民が常蓮寺に集まり、手を振り足を踏みならし夜通し踊り明かしたそうな。 

今も途絶えることなく、毎年7月24日にはこの太子踊りが行なわれていますが、近年は地元地域での高齢・少子化も進みこの踊りの輪に加わる人が少なくなったようです。しかし、今年は同じ飛騨市内の古川町からバス2台での参加もあり、盛大に行なわれていました。
 今流行の“パワースポット”なのでしょうか。私も踊りの輪に混じり、1時間近く踊ったのですが、あまり疲れを感じず、英気を養った感じさえありました。また、振る舞いの樽酒も竹の器で美味しく頂きました。

名刹めぐりで飛騨へお越しに頂くのも、趣も違い新たな旅の思い出になると思います。

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