奥飛騨だより

冬の保存食『寒干し大根』(2012.2月号)

2012年2月号

寒さ厳しい今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

この奥飛騨便りでも幾度かご紹介させていただいておりますが、弊社の本社所在地“飛騨市”は岐阜県下でも有数な豪雪地です。 昨年末から日本列島を襲った大寒波により、ここ飛騨市もすっかり真っ白な雪景色となりました。
今回はそんな豪雪地ならではの、冬の保存食『寒干し大根』の加工がされている山之村地区からお伝えいたします。
飛騨市神岡町の市街地から曲がりくねった県道(市街地との標高差約500メートル)を車で40分程上ったところに7つの集落(森茂・伊西・下之本・瀬戸・打保・和佐府・岩井谷)があります。 この7つの集落を総称して山之村と言われており、実際には地図にはない村なのです。最近では、朝日新聞社等による“にほんの里 100選”にも選ばれ、ひそかに注目をされています。

ここ山之村は昔からの茅葺きの家や板蔵が残っており、現在も使われています。そして冬には、昔からの保存食「寒干し大根」が作られています。 この土地は標高約1,000メートルのところにあり、冬が長く、野菜の収穫時期が遅いため、長期間保存ができるこの寒干し大根は非常に重宝されていたそうです。

さて、寒干し大根ができるまでの工程をご紹介します。
秋に収穫した大根を、一旦土中の室に保存しておき、雪が降り積もり寒さが厳しくなるこの時期に掘り返します。 堀り出したら、水洗いし、皮を剥き2センチ程の輪切りにし、大釜にたっぷりのお湯を沸かし茹で上げます。
輪切りにした大根の中心に藁を通し、軒下に干しておきます。現在では、試行錯誤の結果、一番効率の良い、串に通しているようです。 この時、茹ですぎると串から大根が落ちたり、茹でが足らないと干す(乾燥する)までに時間がかかったりと、茹でる時間が非常に大切だそうです。

およそ一か月間干しておくと完成です。

大根は氷点下10度を超える夜にカチコチに凍り、日中の日差しで水分が抜けてゆく。 この繰り返しで干しあがってゆき、丁度アメ色に仕上がった時が、甘みと香りがグ~ンと増すのだそうです。
この時期、多くの家の軒先で大根を干しているので、それはまるで白い暖簾をかけているようです。飛騨の冬の風物詩ともなっています。

さて、食べ方はと言いますと、ぬるま湯で戻し、戻した出汁で煮物にするのが一般的ですが、私が一番美味しいと思ったのは、戻した大根をすき焼きの具に入れる食べ方です。 大根本来の甘みに加え、牛肉の旨みのでた汁(つゆ)をたっぷり吸いこんでくれるのです。すき焼きに入れるのはもちろん飛騨牛です。 柔らかいお肉と歯ごたえのある寒干し大根の組み合わせは絶品です。皆さんも一度ご賞味ください。

今回は、保存食「寒干し大根」を紹介させていただきましたが、ここ山之村はアウトドア好きの方や田舎暮らしに興味のある方には、ベストなロケーションです。 ゆっくりとした余暇を過ごしたい方は、是非とも“天空の里 山之村”へお越しください。

<交通アクセス>  自動車にて
 東京方面より 中央高速道 松本ICより 約2時間
 名古屋方面より 東海北陸自動車 飛騨清見ICより 約2時間
 金沢方面より 北陸自動車道 富山ICより 約2時間

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