奥飛騨だより

国道41号を富山方向へ(2013.6月号)

2013年6月号

 暖かい気候になり新緑の色が鮮やかになって参りました。寒暖の差が激しい今日この頃ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
 今回の奥飛騨だよりは、神岡町の生命線ともいえる国道41号を守る「防護施設」を散歩しながらご紹介致します。

船津洞門を南側から見た写真

船津洞門を南側から見た写真

船津洞門より見た高原川

船津洞門より見た高原川

 神岡の町から富山方向へ移動する際に一番初めに見えてくるのは船津洞門です。 ロックシェッド、スノーシェッド(以下シェッド)と呼ばれ「落石、雪崩」から道路の通行を守る覆いです 。
 この船津洞門は珍しい事に、入口右側に柱が無く(片持ち構造)になって右手の視界が開けております。自動車で走行中はじっくり見る事が 出来ませんが、車を降りると、左下写真のように、高原川の流れを見る事が出来ます。
 シェッドは落石や雪崩が発生する可能性の有る場所に設置されていますが、定期的なメンテナンスや延長工事が頻繁に行われていて、 国道41号周辺の自然環境がいかに厳しい物であるかを物語っています。初めて神岡に赴任してから移動時に延々と続くシェッドを走行して、 とても驚くと同時に、守りを固める必要がある重要な路線で有る事を認識しました。
 この国道41号は、富山方面へ行くには、代替ルートが無く、この路線が通行止めになった場合の影響を考えますと厳重な守りが必要です。 特に積雪期には、辺り一面が真っ白に積雪しますので、この守りなしには安心して通行する事は出来ません。
 国土交通省中部地方整備局高山国道事務所の資料によりますと交通量の5割は大型車となっていて、北陸自動車道を通行出来ない 危険物(石油及び石油製品)積載車両が多いそうです。神岡にとってまさに大動脈と呼べるものです。

 次に車を止めて散策致しましたのは、東漆山洞門3 です。高原川の川面がかなり下の方に見えます。 右上の写真を見て頂きますと、国道41号が山肌に貼り付くように沿っている事が見て取れます。左下には神岡鉄道(2006年廃線)の 線路が見えました。少し驚きましたが、列車が通らなくなってから7年も経つのに線路がきれいに見えております。 定期的な草刈やメンテナンスが今も行われているのかも知れません。
 自動車道路、神岡鉄道、神岡軌道(1967年廃線)、更に古くは越中東街道(江戸時代中期)と、 高原川沿いは厳しい自然環境の中で交通を確保する為に、先人の方々が命がけで努力されて今の環境が整っている事を実感する景色でした。

 右下の写真は、古いシェッドと新しいシェッドの接合部分です。理由は定かではありませんが、古い物は鉄製の物が多く、 新しい物はコンクリート製の物になっています。同じコンクリート製でも建設した年により柱の形が違ったりしています。 かつては必要最小限(それ以下かもしれません)の防護距離だったものが年々見直しによりシェッドの距離が長くなっていった事が、 接合されている数から見て取れます。
 再び国土交通省中部地方整備局高山国道事務所資料から引用ですが、平成18年豪雪等の豪雪の年には、 雪崩や落石の可能性のある区間を再調査してシェッドの延長や、防護ネットの設置を行っているそうです。 自然相手ですから、ここまでやれば大丈夫だろう。という予測は正確には出来ないだろうと思います。 終わる事が無い継続した対策で私達の通行する道路が守られています。

高原川と神岡鉄道遠景

高原川と神岡鉄道遠景

東漆山洞門接合部

東漆山洞門接合部

東漆山洞門接合部石垣

東漆山洞門接合部石垣

新猪谷ダムより見た洞門

新猪谷ダムより見た洞門

 左上写真は、山側を写したものです。古い部分は天然石を使用した石垣になっています。新しい部分はコンクリートで固められています。 石垣の方が趣が有って良いと思うのですが構築する期間、コスト、保守の工数等々を考えると、コンクリートで 固めてしまった方が良いのでしょう。いずれこのシェッドも寿命を迎えて更新の時期来ると思いますが、交通への影響を最小限に 抑えてこれだけの物を入れ替える必要が有る事を考えると工事を担当される方々の大変さを痛感しました。
(私達の仕事にも同じ事が言えますので尚更です)

 左下の写真は、新猪谷ダムより国道を見た物です。シェッドの上を見て頂きますと、すぐ上に山が迫っている事が分かります。 今は緑が一杯ですが、冬季には雪の塊が道路のすぐ上に有るという事になりますので、このシェッドが無い状態での通行は考えられません。
 写真ではお見せできませんでしたが、新猪谷ダムから神岡側を見ますと、水面に沿って延々と伸びる国道41号と、それを守る シェッドの連なりを見る事が出来ます。自然に挑む近代土木工事見て単純に感動を覚えると同時に、『絶対の安全』は存在しない という自然相手の厳しさも感じました。

 今回は、普段は素通りする「いつもの道」を少しゆっくりと眺めて散歩致しました。
 単に移動の通過地点としてしか見ていなかった色々な施設や風景ですが、自分の足でゆっくりと歩きますと、「全く違う場所」にいるのではないかと 錯覚する位に新鮮な感覚で景色を見る事が出来ました。
 厳しい自然環境の中で大事な物流を支えている国道41号を、大雨の時も大雪の時も安心して通行出来るのは、これらの施設 を維持管理されている関係者の方々のお蔭と思い、日々感謝しながら通行したいと思います。
 皆様方も、通いなれた道をゆっくり散歩してみてはいかがでしょうか。意外な発見が有るかもしれません。

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