奥飛騨だより

冬の庄川峡を遊覧船で行く

2018年1月号

 新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
今年の冬は天候が不安定で、神岡では例年より数週間早く降雪がありました。寒波も繰り返し押し寄せております中、皆様お元気でお過ごしでしょうか。
今回の奥飛騨便りは、富山県南砺市(なんとし)にあります「庄川峡」を遊覧する遊覧船と庄川峡の景観をご案内いたします。
南砺市庄川峡は、神岡町の北東方向50kmの位置にあり、車で1時間30分位かかります。飛騨山地を源流として、白川郷、五箇山を経て富山湾に流れ込む庄川によって形成された峡谷です。庄川には電源開発のためにいくつかのダムが作られており、遊覧船は「小牧ダム」を下流側から上流にある「大牧温泉」へ向けて1日3往復しています。

小牧ダム側船乗り場

小牧ダム側船乗り場

小牧ダム関連設備展示

小牧ダム関連設備展示

 遊覧船の歴史は、小牧ダムと深い関係がありました。このダムは、富山県出身の浅野総一郎が起案し1930年に日本電力(後に関西電力)により完成したものだそうです。北九州市小倉北区には地名に浅野という名前がありますので、少々気になって調べてみました所、北九州市小倉北区にある、某製鉄所の前身、浅野小倉製鋼所の創業者が浅野総一郎であるとのことがわかり、北九州と富山が意外なところでつながっているという事には驚きました。
前置きが少々長くなってしまいますが、この小牧ダムを作るときに、上流で伐採した材木の運搬ができなくなってしまうので、流域の木材業者の方の反対にあい、その解決のために、木材運搬用の設備を備えたとのことです。しかし、その後の木材運搬は川に流す方法ではなく、トラック輸送に置き換わってしまったので、その設備も長く稼働する事がなかったという事です。色々なものが技術革新によって、方法や手法が一気に置き換わってしまったという少し悲しいお話です。
大牧温泉につきましては、ダムが出来る時に水没地点にあったため、ダム湖畔まで移転したのですが、「なぜかアクセス道路を造らなかった」ために、現在では観光船でしか行けなくなってしまい、そのおかげ?で、サスペンス系のテレビ番組ではおなじみの温泉になっています。このダム湖の脇を通っている国道156号線(通称イチコロ線)は、このダム建設に伴い工事用として整備された道路が前身になっているとのことです。遊覧船から見える156号線は、近代土木がどれだけ凄まじい力を持つものかをヒシヒシと感じることが出来る景観を持っています。その景観は次ページ以降に写真でご案内します。

船乗り場から見る小牧ダム

船乗り場から見る小牧ダム

待合室その1

待合室その1

待合室その2

待合室その2

待合室その3

待合室その3

 上記写真の待合室その1に、観光遊覧船にしては手荷物取扱所という少し場違いな感じを受ける表示があります。表示の古さからの推測ですが、遊覧船になる前は、日本電力(後に関西電力)が運用していたそうですので、その時の名残ではなかろうかと思いました。水没に伴う移転に関しては、大牧温泉だけにスポットが当たっていますが、周辺の民家も同じように移転を強いられたはずですから、その移転先での交通機関機能を担っていたようにも思えます。

遊覧船その1

遊覧船その1

遊覧船から見た船着き場

遊覧船から見た船着き場

 それでは遊覧船に乗りましょう。寒い日でしたが、船内は暖房が効いており、また、海と違って波がないので、快適な乗り心地でした。小牧ダム側での乗船時は、1月1日のお正月にも関わらずほぼ満員で、ほとんどの方は大牧温泉に宿泊される方でした。2階にはオープンデッキもありますので、乗船当日は天候が悪かったので長居はできませんでしたが、天候が良ければ船室2Fのデッキで風を受けながらの観光もよさそうです。

遊覧船、船内

遊覧船、船内

遊覧船から見るカモ

遊覧船から見るカモ

大牧温泉船着き場

大牧温泉船着き場

観光船から見る大牧温泉

観光船から見る大牧温泉

 観光船から見る景色は、冬の庄川峡がどれほど厳しい環境か実感できるものです。山肌には雪崩の起きた跡がたくさんあって、ここに道路を通すことがどれほど大変なことかがよくわかります。
特に、国道156号線の写真は、あらかじめ情報をお伝えせずにこの写真だけを見られた方は、これが道路の写真とは思えないでしょう。まるで要塞のようです。この国道156号線を、何の防護設備もなしに走行しなければいけなかった昔の人たちが、ここを「イチコロ」と呼んだ気持ちがよくわかります。ちなみに写真はモノクロに見えるものもありますが、すべてカラー写真です。

船尾より湖面を見る

船尾より湖面を見る

観光船から見る国道156号線その1

観光船から見る国道156号線その1

観光船から見る国道156号線その2

観光船から見る国道156号線その2

観光船から見る国道156号線その3

観光船から見る国道156号線その3

 気軽な遊覧で乗ったはずの遊覧船でしたが、凄まじい景観に圧倒されてしまい、のんびりとは行きませんでした。一般的な観光はもとより、道路マニア、ダムマニアの方にお勧めの観光船です。なお、往復運賃は大人一人2,800円です。もちろん、秘湯に興味のある方は大牧温泉で宿泊してのんびりされてはいかがでしょうか。

■庄川遊覧船株式会社
http://www.shogawa-yuran.co.jp/

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