奥飛騨だより

飛騨の年末風景

2008.1月号

 あけましておめでとうございます。
今回は、昨年12月23日に神岡町で行われた「船津の門前市」の様子をお伝えします。

 かつて年末の風物詩として親しまれていた「大歳市」を地元の商店主が中心となり復活させたのが「船津の門前市」です。 前身の「大歳市」ではその昔、商人が路上に店を構え、山積みの越冬商品を道いっぱいに広げ商いをしていました。客を呼び込む商人の声と、良い品を求める客とで、「大歳市」は大変な賑わいを見せたそうです。
 特に富山湾で獲れる大物の寒ぶりは出世魚であることから縁起物として親しまれたといいます。いまでも寒ぶりは有り難いものとして、飛騨では考えられています。

 冷蔵・冷凍技術が未発達の頃は、寒ぶりが腐らないよう塩漬けにして、富山から飛騨まで歩いて運んでいました。現在とは比較にならないほどの時間と労力が必要だったことは想像に難くありません。
 社会の発達に伴い、当時の苦労はすっかり昔話となってしまいましたが、富山の寒ぶりを楽しみにされる方が大勢いらっしゃることは今も昔も変わりがないようです。富山~飛騨間の道が「ぶり街道」と呼ばれることからも、このことがうかがえます。 この寒ぶりは、飛騨では「塩ぶり、越中ぶり」と呼ばれ、野麦峠を越えて信州に入ると「飛騨ぶり」と呼称を変えていきます。

 大晦日や正月に年越しそばを食べるように、「ぶり料理」を食べることが飛騨では慣わしとなっています。「船津の門前市」と同時開催された「ぶり・ノーベル出世街頭祭り」では、富山の寒ぶりが特設会場にて実演解体され、 会場を訪れた方々にプレゼントされました。
そのほかにも花餅市、バザー、商品券が当たる年末大交換会など多彩なイベントが行われました。

 「花餅」と聞いて首をかしげる方もいらっしゃるとおもいます。これは枯れ枝に、花に見立てた小さな餅を巻きつけた正月飾りの一種です。 元々は江戸時代、小正月に餅を農耕の神様にささげ、その年の豊作を祝う目的で作られたそうですが、雪深い飛騨地方のこと、冬でも散らない花を、という想いも多分に籠められているのではないでしょうか。
 一般には玄関に飾られることが多く、役目を終えると餅を木からはずし、油で揚げるなどして食べられます。

 暖冬だった昨年とはうってかわり、今年は全国的に厳しい冬になりそうです。
飛騨地方でも年末から正月にかけて大荒れの天気となり、積雪深70センチを超えたところもありました。しかしその厳しい寒さが、この時期にしか観ることのできない樹氷など幻想的な風景を創り出すこともまた事実です。いずれにしても、飛騨の冬は始まったばかりです。

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