奥飛騨だより

春の風景(2008.4月号)

2008年4月号

外を歩いていると、雪解け水が水路へ流れ込む音が四方から聞こえてきます。 ほんの一月前には凍結していた道路もいまでは時折逃げ水が見られるなど、すっかり春の陽気となりました。

神岡城(飛騨市神岡町)付近から町を見下ろした景色です。雪は遠くの山に見られる程度になりました。 おそらく各家庭では庭木の雪囲いが解かれ、冬の間活躍した除雪道具も片付けられたことかと思います。 それでも飛騨地方の春は他地域よりもずっと緩慢で、桜が咲くにはまだ何週間かの猶予があります。 桜の木はまだ小さなつぼみをつけ始めたころでしょうか。 四月には飛騨各地でお祭りがありますが、満開の桜の中でのお祭りになれば素敵です。

緩やかな弧を描いて流れる瀬戸川と、それに沿って連なる白壁土蔵の風景が印象的な飛騨市古川町の様子です。 訪れたことのある方はご存知かと思われますが、瀬戸川にはおよそ千匹の鯉が放流されており、景色を構成する要素として欠かせない存在となっています。 冬の間は、鯉は他所へ移されて川自体を眺める楽しみは減ってしまいましたが、その代わりに雪化粧が町を彩ってくれていました。 それも終わり、四月の上旬頃には再び鯉が戻ってくる予定です。

日差しの強くなった町中ではすっかり居場所をなくした雪も、標高があり木陰にも護られている山中ではまだまだ景色の主役といえます。 写真は県立自然公園にも指定されている飛騨市国府町の宇津江四十八滝の様子です。 木漏れ日でじわりじわりと雪が溶かされて、春の水で普段よりも迫力ある景色が楽しめるかと思います。 遊歩道にもまだ雪が残っており、足元が悪いのが難点ですが、この時期だけの貴重な景色なのかもしれません。

右の写真はふきのとうです。初春の代名詞ともいえる植物ですね。 雪下から地面が顔を覗かせるようになると無意識のうちに目線がこの植物を探していることがあります。 不思議なもので探している最中はなかなか見つからないのですが、ふと気付いたときには路傍や畦道に結構な大きさに成長している姿が数多く見られます。 それは他の植物でも同様なようで、ぼんやりしていると、いつの間にか人は季節においてけぼりにされてしまうような気がします。

今年の桜を見逃された方がいらっしゃいましたら、この機会に飛騨にお越しになってみてはいかがでしょうか。いつもと違う場所で見る桜も良いものかと思います。

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