奥飛騨だより

渓流釣り(2008.6月号)

2008年6月号

気温の上昇著しい5月、山川の草木は弾けるように一斉に萌え立ちます。 風が心地よく木々を揺すり、人にも動物達にもすごしやすい、新緑の季節です。

この季節、神岡町内を流れる高原川は渓流釣りを楽しむ人々で賑わいます。 禁漁解除となる3月上旬には、雪が積もっているなかでも高原川へ入る釣り人の姿もありましたが、暖かくなったことが理由なのでしょう、5月に入ると人出は格段に増えました。 ゴールデンウィークともなると、川沿いの道路脇に車が多数駐車され、他県のナンバーの車が目立ちます。 川を見れば100メートルおきに釣り人がいる、そんな状況はこの時期珍しくありません。

5月の主な対象魚は、イワナ・ヤマメ・アマゴあたりでしょうか。 これらの中で、30センチを超えるような大物は特に「尺イワナ」「尺ヤマメ」と言われます。 多くの釣り人にとって「尺」級に出会うことは、釣りを行う上での大きな憧れとなっています。 魚達は警戒心が強く、その上希少な「尺イワナ」や「尺ヤマメ」を釣り上げることは容易ではありませんが、だからこそ毎日のように川へ赴く、釣人が後を絶たないのではないでしょうか。

5月も終わりに近づくと、地元の漁業協同組合の手によって鮎の成魚放流が行われます。 その後禁漁が解除されると鮎の「友釣り」で多くの釣り人が訪れます。 「友釣り」とは鮎が縄張りを作る習性を利用した漁法です。これは囮の鮎を縄張りに侵入させ、攻撃を仕掛けてきた鮎を釣り上げる、というものです。 神岡の市街地近くでもこの様子はよく見られ、この時期の風物詩のひとつとなっています。

魚を釣る行為だけでなく、釣っている場所そのものの風景を楽しむことが広義の「釣り」の意味であり、楽しみなのではないか、ふとした瞬間にそう思うことがあります。 同じ場所でも季節がほんのすこし違うだけで、また、同じ日でもそこに居る時間が違うだけで、川は異なる表情を私たちに見せてくれます。 美しさだけでなく、厳しさをもあわせ持つ飛騨の四季は、「絶景」と言う言葉だけでは言い表せ切れません。

高原川はすぐ近くに国道471号が通っているため、簡単に河原へ降りることが可能です。釣りをしない方も一度訪れてみてはいかがでしょうか?

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