奥飛騨だより

きつね火まつりと紅葉(2008.11月号)

2008年11月号

この頃では、息が白む日もでてきました。秋の最中にあって、冬の足音が確実に近づいているのを感じます。さて、今月は飛騨古川のきつね火まつりと、秋の植物の様子をお伝えします。

まずはきつね火まつりからご紹介します。
このお祭りは、地元の御伽話”きつねの嫁入り物語”をモチーフにしており、県内外から集った若者が参加することで近年知られるようになりました。
―大蛇のいじわるで水不足に陥った古川の土地を、「おこん」という女狐が救い、それに感謝した殿様が、「おこん」を嫁として増島の城へ迎えいれる―
これが”きつねの嫁入り物語”のあらましです。この物語を”狐組”と呼ばれる地元の若者達が構成から演出までを手作りで行い”祭り”へと昇華します。

祭りのメインは、夕暮れから夜にかけて訪れます。第一幕が”嫁入り行列”、そして第二幕が”祝言”で、いずれも”きつねの嫁入り物語”の一場面を再現したものとなっています。
”嫁入り行列”では、狐に扮した行列が古川の町を厳かに進んで行きます。行列が目指す先は増島の城跡。沿道では多くの観客が行列を見守っています。行列の周囲には白壁土蔵と水路という昔ながらの町並みが広がり、たゆたうろうそくの明かりが、それらの景色と行列を妖しく照らしだします。その場にいる誰もが、物語の中に入ってしまったような、不思議な感覚を共有しているのでは、と想像します。
行列が増島の城跡に到着すれば、第二幕”祝言”の始まりです。特設ステージで繰り広げられるショーを楽しめる、エンタテイメント性溢れる一時を味わえます。特に、きつねの嫁入りを邪魔しようとする藁の大蛇は必見です。

10月中頃からは各地で紅葉が始まります。写真は高山市の飛騨の里付近で撮影したものです。山頂に近い場所でしたので既にかなり色づいていますが、山を降りるにつれ、紅葉の度合いは少なくなっているようです。まだまだこれからが本番、という印象を受けました。
同じ飛騨地方でも、場所により紅葉の時期にかなりのずれがあります。なかには11月下旬頃が一番見頃、というような場所もあります。その頃にはひょっとしたらもう雪が降り始めているかもしれませんね。
高山市内の紅葉情報については、高山市のホームページが詳しいので、参考にされると良いかと思います。

こちらは高山市内で見かけた一位(イチイ)の木の様子です。一位には、この時期、ご覧のように赤い、湯のみのような形の実が沢山実ります。甘くておいしい実ですが、種は毒性があるそうです。
一位は庭木として全国で見られる木で、特段珍しいものではありませんが、岐阜県の県木にも指定されていたり、また飛騨高山では伝統工芸品、一位一刀彫の材木として用いられたりと、他所よりもずっと身近な木として認識されています。その一位一刀彫は市内の土産屋などで見ることが出来ます。高山にお越しの際には是非ご覧いただきたいものの一つです。木目が細かく、とても美しい彫り物だと言われています。

雨が降る日も多いこの頃ですが、雨上がりの澄んだ空気の中では、紅葉はより綺麗に見えます。雪が降る前にしっかりと記憶に残しておきたい風景です。

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