奥飛騨だより

飛騨地方の絵馬飾り

2015年4月号

皆様いかがお過ごしでしょうか。
今年は全国的にも雪が多かったようですが、飛騨地方ではまだまだ降ったり止んだりしている状態で、春の訪れはもう少し先になりそうな予感です。
さて今回の奥飛騨だより、タイミング的には、飛騨高山祭のご紹介が丁度良いのですが、過去にも数回お伝えしておりますのと、 もう少し先の話題を前倒しで紹介する意味も込め、「飛騨絵馬」についてご紹介させて頂きます。

絵馬と言いますと、一般的には木板に描かれたものが多いらしく、思いつくのは神社等に奉納されているものではないでしょうか。 それが飛騨地方では個人宅や会社の玄関に紙絵馬を貼る風習があります。
絵馬には「火の用心」「家内安全」「商売繁盛」「交通安全」などの祈願印に囲まれて、宝物を担いで走る馬の様子が描かれています。
自分も小さい頃から目にしているのであたり前のように感じていますが、初めて見られる方は驚かれるかもしれませんね。
家庭によっても違うのかもしれませんが、我が家では毎年8月1日~15日に高山市本町2丁目で開催される「馬頭(ばとう)の絵馬市」で絵馬を購入し、 ちょうど神社のお札のように毎年交換します。
今まであまり意識していませんでしたが、これはきっと何かいわれがあるハズ、歴史探訪といきましょう!

馬頭の絵馬市が開催される山桜神社を訪れてみました。 さすがに時期外れということもあり、観光客の目にも触れず、ひっそりと佇んでいます。

境内を歩いていきますと大きな願掛け札に山桜神社と絵馬市に関する記載がありました。 文字が霞んで少し読みづらいですが、どうやら山桜神社の「山桜」は、飛騨国高山城主金森頼直の愛馬「山桜」から命名されたようです。
明暦3年(1657年)の江戸の大火で高山藩の江戸屋敷が炎に包まれた際、山桜が百閒堀を飛び越えて、 城主頼直はおろか、家臣3名も一度に乗せて助けたといういわれがあるようです。

そしてこの山桜神社の場所こそが、晩年山桜が過ごした厩舎跡だとの事です。
なるほど、そういえば「防火の神様」と小さい頃に言われたような気がしてきました、 秋葉様(秋葉神社)とは何が違うのだろうと子供ながらに思った覚えがありますがようやく納得です。
また、小さい頃には「玄関の怖い馬の絵」という思いもありましたが、真相を知って愛着がわいてきました。

さて、この絵馬ですが、すべて職人さんの手書きのため、全く同じものがありません。
馬の色も白黒あれば、頭の向きも左右、鞍の色や宝物の色も赤青など・・様々です。
色については好みで良いと思うのですが、実は頭の向きが重要で、玄関に貼る際に馬が家の中に向かうように向きを考えて購入してください。 これを間違えると運を運んで入るどころか出て行ってしまいますよ。ご注意を・・

絵馬市では、境内に準備された紙絵馬から好みの絵馬を探し出し、自宅にかざる物であれば自分の性を、会社であれば会社名を伝えます。 その場で○○氏というように筆で書いて頂き、仕上げに祈願印がいくつか用意されていますのでバランス良く押印し(我が家ではあるだけ全部!)、 これにて世界に一つしか無い、自分だけの絵馬が完成します。

また料金の支払いの際には、名馬の値になぞらえて、100円を100万両と呼んで取り引きされますので、 「はい、1,500万両!」「2,500万両」などど、威勢良く叫ばれますので、腰がひけないよう円に換算してお支払ください。(笑)
また、毎年入り口には大きな絵馬(縦2m横4m位)が飾られ、余白には文字が書ききれなくなるほどの願い事が参拝者によって書き込まれます。

山桜神社での開催は毎年8月1日~15日まで。また毎年8月8日~10日には、「山桜」の亡骸が祭られたという松倉山大悲閣(高山市松倉町)でも絵馬市が開催されるようです。
少し先のイベントになりますが、夏休みにでも飛騨高山へ来られた際には足を運ばれてはいかがでしょうか。

<高山市観光情報>
http://kankou.city.takayama.lg.jp/2000019/2000020/2000142.html
商工観光部 観光課
電話:0577-35-3145 ファクス:0577-35-3167

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