奥飛騨だより

神坂(かんさか)と奥飛騨の例祭

2016年4月号

 飛騨市神岡町の中心市街地には、大津神社・朝浦八幡宮・白山神社の三社があります。その1つの朝浦(あそら)八幡宮に続く、勾配31.5%(水平距離100mに対して高さが31.5m上昇)、角度で約18度の急勾配の「神坂」(かんさか)と呼ばれる全長100m~200m程の坂道があります。この道を昔、朝浦八幡宮の例祭の時に神輿が通過したことから、「神」の「坂」と書いて「神坂」(かんさか)と呼ばれるようになったと言われています。

藤波橋左岸側からの神坂

藤波橋左岸側からの神坂

神坂の全体イメージ

神坂の全体イメージ

神坂の登り口付近には、案内板が掲げられています。

神坂の登り口にある案内板

神坂の登り口にある案内板

案内板付近から見上げる勾配18度の神坂

案内板付近から見上げる勾配18度の神坂

この案内板には
「藤波橋の橋詰から上がる急な坂(傾斜18度)で胸をつくような坂の両側にびっしりと家が立ち並んでおり、思わず足を止めたくなるような風景です。十二代江馬時正が、八幡山の河尻権化を滅ぼした際に八幡宮も焼き払われてしまいましたが、その数年後には江馬一族を始め領内に悪病の流行や災害が発生し、神のたたりとの風説が流れたため、八幡宮を再興して大祭を執行しました。
それ以来、毎年8月の例祭に巡行行列並びに還御行列で六角の大神輿が往来したこの坂を、誰言うとなく「神坂」(神様が通った道)と呼ぶようになったことが名前の由来といわれています。神坂にはかつて、鍛冶屋が2軒、呉服屋が2軒、旅館や豆腐屋などがあり、交通の要所だった藤波(現在の藤波橋)のすぐそばの通りとして商いが賑やかな通りでした。」とあります。

坂の両側には軒が重なり合うように民家が立ち並んでいます。昔は多くの家々が朝浦八幡宮の氏子だったのだろうと思います

 足元の道路は約10~20数センチ単位で結構深い溝が切られ、雨や雪等の時も含めて制動力(グリップ)が効くようになっていますが、雪の降る日は歩くのには随分と苦労しただろうと思われます。特に下り坂で転んだら、坂の下まで転げ落ちたのではないかと、足元が竦(すく)む感覚に陥る傾斜です。片側の側溝には朝浦八幡宮から流れ落ちてくる水が、雪解け水の増水のあるせいか勾配も手伝って勢いよく流れ落ちていきます。水の音も賑やかです。
18度の急勾配は距離にして30m~40mほどでしょうか。
やがて緩やかな勾配となり、更に進むと少し広い広場にでます。ここには「延命地蔵尊」が祭られています。
神坂の入り口には車の進入規制等の標識は、見落としていたのか、見当たりません でした。 この日は車やオートバイともすれ違わなかったのですが、こんな急勾配でも通行可能なのでしょうか。通行可能だとしても素人は危ないので通らないというのが正解でしょう。 少し珍しい、飛騨神岡の昔の懐かしい風景に思いを馳せて少し散歩されてはいかがでしょうか。

緩やかな勾配の坂の頂上付近から見た神坂

緩やかな勾配の坂の頂上付近から見た神坂

延命地蔵尊のある広場

延命地蔵尊のある広場

 閑話休題です。坂で有名な街は、私の知っている著名な地として長崎、小樽、函館、熱海等がありますが、さてどこの勾配がきついのでしょうか。ネットを調べるとありました、ありました。
長崎には、飽の浦町にある「変電所の坂」と呼ばれる勾配が約35%(水平距離100mに対して高さが35m上昇)。角度でいうと約20度の坂があるようです。自動車やバイクや自動車の普通に通れるようですが、車の運転手は上り坂では空を見上げて運転する感覚でしょうか、ひっくり返る恐怖で一杯でしょうね。
小樽には十間坂又は手宮十間道路の坂と言われている勾配が23%(水平距離100mに対して高さが23m上昇)、角度で約13.2度の坂があるようですが、雪の日は通れないでしょうね。 他にももっと急な坂がそこかしこにあるようです。皆さん探してみて下さい。

さて4月は入園式、入学式、入社式、そして飛騨では春祭りの季節になります。農家での田植えは5月からが本格的な時期なのですが、田植の繁忙期を少し避け、その年の穏やかな気候と豊作、そして家内安全を祈願し例祭が執り行われます。
4月第四土曜日(2016年は4月23日)には、先ほどの大津神社・朝浦八幡宮・白山神社の合同例祭が同日に行われます。飛騨では高山祭「屋台祭」・古川祭「起こし太鼓」・神岡の「船津の行列祭」が飛騨三大祭と呼ばれていますが、その1つです。
三社共に、平安絵巻の行列があるのですが、中でも大津神社は笛・太鼓・鉦の祭りばやしの中、子供神輿、やっこ姿の子供、猿太彦(さるたひこ)、獅子舞、鶏闘楽(けいとうらく)、大小の神輿、采女、神楽、雅楽や四神旗の行列が神岡のメイン商店街の西里通りを春の日差しと桜吹雪に吹かれながら通り過ぎていく様は圧巻です。
又、飛騨古川でも2016年4月19,20日と春の古川祭り「屋台曳き揃え」があります。飛騨の匠の技の結晶である豪華絢爛な9台の屋台は高山祭りに負けない美しさと繊細さがあると思います。

上記に記載した祭り以外に、この季節は飛騨の各地域でお祭りが行われています。ノーベル街道(国道41号線)を賢人に思いを馳せ、麗らかな春の日差しと桜を愛でながらドライブしつつ、奥飛騨の春祭りに来てみてはいかがでしょうか。町内のあちらこちらから、笛・太鼓・鉦が聞こえてくると思いますよ。そして神坂も見学に訪れてはいかがでしょうか。

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