奥飛騨だより

飛騨高山を走る-飛騨高山ウルトラマラソン-

2017年07月号

今月の奥飛騨だよりは、6月11日(日)に高山市で行われた、「飛騨高山ウルトラマラソン」の模様をお届けいたします。高山市は三井金属ユアソフトがある飛騨市のお隣の市です。
「飛騨高山ウルトラマラソン」は今年で6回目を迎えたマラソン大会です。通常のフルマラソンは42.195kmを走るのですが、ウルトラと名前が付くだけに、飛騨高山ウルトラマラソンは、100kmと71kmの2種目あり、より長い距離を走るマラソン大会です。
このウルトラマラソンは、山岳地帯の多い飛騨地域を走るだけあって、国内屈指のタフなマラソン大会と言われており、日本でも5本の指には入るのではないというほどの厳しいコース設定がされています。その厳しいと言われている所以は、圧倒的な高低差にあります。平坦な道が少なく、ほとんどが上りと下りを繰り返す坂ばかりのコースです。累計標高差(上りと下りの標高差を合計した距離)はなんと2,707mもあり、富士山の7合目までを海から一気に登ってくるイメージになります。こんなコースを誰が走るのかと思うのですが、国内外から、3,000名ものランナーが参加する大きな大会になっています。今回はこの厳しくも見どころがたくさん詰まったマラソン大会をカメラ片手に参加してきましたので、皆さんにご紹介したいと思います。

もうすぐスタート

もうすぐスタート

古い町並みを走る

古い町並みを走る

走行距離が100kmと71kmと長いこともありスタート時刻は早朝となります。朝の4時45分から種目別に順番にスタートします。6月中旬の飛騨の朝は寒く、この時の気温は13度ほどでした。100kmは14時間、71kmは11時間の制限時間があり、とても長いマラソン大会です。スタートして5分ほど走ると、大会の目玉である、飛騨高山の「古い町並み」を走ります。いつもは観光客でごったがえす道ですが、今日だけはランナーが独占して走ることができます。普段は走れない場所を堂々と走ることができるのもマラソン大会の醍醐味です。こんな機会は滅多にないので、走行するランナーの邪魔にならないよう、コースから外れて写真を撮りました。

田園の中を走る

田園の中を走る

乗鞍岳に向かって走る

乗鞍岳に向かって走る

高山市街を抜けると、のどかな田園が広がるコースに入ります。田んぼのカエルの声や、牛舎の牛の鳴き声を聞きながら、早朝のひんやりとした空気を感じながら走行していきます。

美女峠のエイドステーション

美女峠のエイドステーション

給水の様子

給水の様子

「飛騨高山ウルトラマラソン」の魅力の1つは充実したエイドです。エイドとはランナーが途中で給水・給食、救護等を受けるために設けられたポイントのことです。この大会では約5kmおきにエイドステーションが設けられており、距離が長いだけあって、たくさんのエイドが運営されています。エイドは主にボランティアスタッフよって運営されており、今回も地元の1,200名のボランティアスタッフによって運営されていました。本当にありがたいことです。

火畑そば

火畑そば

飛騨牛焼肉

飛騨牛焼肉

エイドでは、水やスポーツドリンクだけでなく、果物やパン・おにぎり・飴や梅干しなどが提供されます。大きなエイドでは、地元の特産品も味わえます。飛騨のトマトジュース・リンゴジュースに始まり、食感がシコシコツルツルのとっても美味しい“よもぎうどん”・蕎麦の香ばしさが味わえる火畑そば、そして57.2km地点では、飛騨牛の焼肉が味わえます。私は、さすがにこの距離を走った後での焼き肉は、胃袋が受け付けなかったのですが、足も胃も強靭なランナーは、たくさん食べていました。この飛騨牛を始め多くの特産品をお目当てに走っているランナーは多いのではと思います。

手作りの看板で応援

手作りの看板で応援

あんばよういきないよ~

あんばよういきないよ~

もう1つの魅力は、地元住民からの声援です。各地区いろいろ趣向を凝らしたおもてなしで応援をしてくれます。ブラスバンドや太鼓での応援、ハイタッチでの声援も大きな力になります。昼近くなり暑くなってくると、自宅の水道水を道に撒いたり、選手にかけて下さる方もいました。私設エイドを開設して下さる方もおり、登り坂が続き次のエイドまで程遠い場所を見計らって補給していただくのでとてもありがたい存在でした。公設エイドにはない麦茶や漬物といったおもてなしを受け、本当に助かりました。
農作業をしている農家の方々が手を休め声援を送ってくださるのもうれしかったです。

山道を走る・歩く

山道を走る・歩く

乗鞍の麓から白山を望む

乗鞍の麓から白山を望む

飛騨高山マラソンは飛騨山脈の一角の乗鞍岳の麓まで登ります。コース最高地点:1,345mの飛騨高山スキー場までの上り坂が、一番のきついポイントです。「高低差100m以内は坂とは言わない」という名言がある飛騨高山マラソンですが、ここからが本当の登り坂です。
太陽も高い位置になり、気温も上がってきました。永遠に続くようなきつい急こう配な坂道が10Kmほど続き、この坂に到達すると、毎回、大会に参加したことを後悔し、来年は参加するものかと思うのですが、登り切った後に広がる下界の景色と、間近にそびえる乗鞍岳を見ると、来年もまた参加したいと思うのでした。多くのランナーが同じ思いをしているのではと思います。

ゴール地点のハイタッチ隊

ゴール地点のハイタッチ隊

市長のお出迎え

市長のお出迎え

ゴール地点では長い距離を走ってきたランナーを多くのスタッフが出向かえてくれます。
選手一人ひとりの名前をアナウンサーが読み上げてゴールテープを切る瞬間まで実況してくれます。ゴールテープを切ると高山市長がハグと握手でお出迎えしてくれました。この日は天気も良く最高気温は20度。高山市長はトップランナーのゴールから制限時間までの約7時間を炎天下のなか、ゴール地点で待っていてくれました。市長を始めとして、地元住民が一丸となって応援してくれる暖かいマラソン大会だということを強く感じました。
優勝者のタイムですが、男子100kmは7時間21分26秒、女子100kmは8時間21分24秒でした。トップランナーのほとんどがこの難コースを歩くことなく走り続けたのだと思うと本当に驚きます。この大会は距離が長いので、とてつもなくハードルが高いマラソン大会と感じるかもしれませんが、登り坂は歩くなどして「頑張らない」「あきらめない」の精神で走ればそれほど難しくないマラソン大会です。ちなみに、今大会の完走率は77.8%でした。完走を目標しなくても、地元の皆さんから応援を浴びるだけでも参加してよかったと思えるマラソン大会だと思います。少しでもマラソンの覚えがある方は一度参加されてはいかがでしょうか?

■第6回飛騨高山ウルトラマラソン
http://www.r-wellness.com/takayama/

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