奥飛騨だより

ひだ宇宙科学館カミオカラボがオープン

2019年5月号

2015年9月14日に米国の巨大観測装置LIGOが重力波を検出しました。 重力波はおよそ100年前にアルベルト・アインシュタインが存在を予言したもので、 太陽質量の36倍と29倍のブラックホールが合体した際に発生し、13億光年先から伝わったものでした。 その重力波の世界最高精度の観測装置「KAGRA(かぐら)」が飛騨市神岡町の地中で、2019年秋の本稼働に向け準備を進めています。 KAGRAは神岡のKAと、重力Gravity のGRAから作られた愛称で、神様に奉納する「神楽」のごろ合わせにもなっています。

ここ神岡の地中には、小柴昌俊先生の2002年ノーベル物理学賞受賞の元となった「カミオカンデ」、 梶田隆章先生の2015年度ノーベル物理学賞受賞の元となった「スーパーカミオカンデ」のニュートリノ観測装置もあります。 そして3つ目のノーベル賞につながるかもしれないKAGRAができ、 神岡町は「星の便りの届く町」「宇宙に一番近い夢の郷」なのです。

しかしこの宇宙のロマンを感じる実験装置は地中にあり、ちょっと行って見せてくださいとはなりません。 1年に2日だけGSA(ジオスペースアドベンチャー)として一般公開されていますが、それ以外だと見学できないのです。 そこでいつでもこの観測装置が分かるよう2019年3月27日に「ひだ宇宙科学館カミオカラボ」がオープンしました。 オープニングセレモニーには梶田隆章先生も駆けつけてくださいました。

カミオカラボ全景

カミオカラボ全景

カミオカラボ入口

カミオカラボ入口

巨大スクリーン

巨大スクリーン

光電子増倍管

光電子増倍管

迫力のある映像やゲームで、普段見ること感じることのできない素粒子の不思議な性質を体感することができます。

・ニュートリノはどのくらいの大きさなの?
・ニュートリノが何でも突き抜けるのはなぜ?
・ニュートリノが水にぶつかると光るしくみは?
・ニュートリノが変身するのはなぜ?

といった問いの答えが展示の中にあります。素粒子に関する展示施設というのは世界の中でもここだけではないかと思います。カミオカラボは道の駅「宙(すかい)ドーム・神岡」に隣接していますので、親子で道の駅で食事をして、映像・ゲームを楽しむことができます。

観測装置の配置

観測装置の配置

KAGRA模型

KAGRA模型

観測装置が地中にあるというとエレベーターで降下するとか、自動車でらせん道路を降りるとか下がっていくイメージがありますが、 実は入口の地面から観測エリアまではあまり高低差なく平行に進みます。 その訳は観測装置がある池ノ山の標高が1,368.7mで、その山頂から1,000m下に配置されているからです。 それを可視化したのが上記左側写真の山の模型です。

KAGRAは3キロメートルの二つの管が直交する巨大な装置です。その模型が上記右側写真です。 重力波観測装置は前述の米国LIGO、イタリアのVirgo、そして日本のKAGRAの3台が同時に観測することで、 重力波が宇宙のどこから来たのかを突き止めることができるようになります。 これら装置は地球と太陽の間の距離が原子1個分変化することを観測できるというから驚くべき話です。

スーパーカミオカンデの次の「ハイパーカミオカンデ」は、2026年度の観測開始を予定しています。 ハイパーはスーパーの約10倍の体積を持つので、スーパーの10年分の研究データが1年で得られることになり、今まで見えなかったものが分かるかもしれません。 KAGRAで、そしてハイパーカミオカンデが3つ目、4つ目のノーベル賞の受賞につながるかもしれません。

話が横道にそれますが、富山県富山市から神岡町を通り、岐阜県高山市に抜ける国道41号線は、ノーベル賞受賞者と下表のようなゆかりがあり「ノーベル街道」と呼ばれています。

氏名(敬称略)年次受賞ゆかり
利根川進1987年医学・生理学賞小1〜中1まで、富山県旧大沢野町で過ごした
白川英樹2000年化学賞小3〜高3まで、岐阜県高山市で過ごした
小柴昌俊2002年物理学賞神岡町で実験
田中耕一2002年化学賞富山市で生まれ、富山市で過ごす
梶田隆章2015年物理学賞神岡町で実験

話を戻しまして、展示の最後におもしろいものを見つけました。

ノーベル賞メダル

ノーベル賞メダル

小柴昌俊先生色紙

小柴昌俊先生色紙

ノーベル賞メダルのレプリカかと思いきや、チョコレートでした。 「こちらはノーベル博物館のみで購入可能な品物です」との説明文が付いていますので、珍しい物であることには違いありません。

今まさに宇宙ブーム。ブラックホールが史上初めて直接撮影されました。 はやぶさ2が「リュウグウ」から戻ってくるのも楽しみです。 これまで見えなかったものが見えるように、分かるようになって来ました。 小柴先生の「やればできる」が実践された積み重ねの結果ではないでしょうか。

ひだ宇宙科学館カミオカラボ - 飛騨市公式ウェブサイト
 https://www.city.hida.gifu.jp/site/kamiokalab/

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