飛騨高山ものづくり実践塾 作品展
2020年12月号
早いもので、今年も終わろうとしています。今年は、コロナ禍で大変な思いをされた方も多いと思いますが、早く終息する事を願っております。
さて、今回は、高山市内で開催された、飛騨高山のものづくり職人たちの作品展の様子をご紹介いたします。
「ものづくり実践塾」として、「飛騨高山の強みを生かした売れるものづくり」について、
一流のバイヤーの指導や助言を受けて、新たな商品開発や見せ方を学んできた方々の作品展という事で、興味がわき出かけてみることにしました。
作品展が開催されたのが、高山市内にある「日下部(くさかべ)民藝館」ですが、1
1代目当主の日下部礼一氏が、思想家の柳宗悦氏が提唱する「民藝運動」の思想に共感し、
雑誌「暮らしの手帖」の創刊者として知られる、花森安治氏の勧めもあり、自邸の一部を改装して「民藝館」として昭和41年に開館されました。
様々な民芸品等が展示されており、国の重要文化財に指定されています。
建屋の中に入ると、受付の方が丁寧に案内をしてくれました。いろいろな作品が展示されていましたが、印象に残った作品の一部をご紹介いたします。
飛騨の伝統工芸である「一位一刀彫」の作品です。
作者は、小さなころから木工作が好きで、自然と彫刻の道を志し、「一位一刀彫」の師匠の元で修業をされたそうです。
「般若」は、情念が籠った女性の表情を映し出した作品ですが、非常に細かい作業にもかかわらず、見事な作品だと思いました。
作者は、家業である木工会社の二代目で、自社ブランドとして立ち上げた「ノクターレ」の作品です。
ブランド名の「ノクターレ」は、飛騨弁で「温かい」を意味する「のくたい」と、イタリア語で「創り出す」を意味する「インベンターレ」を組み合わせた造語だそうです。
針葉樹である地元のスギを使った作品で、とても柔らかい素材のスギは、傷がつきやすく形も変わりやすいため、
従来の木材の接合方法を使わない方法で強度を出すのに非常に苦労されたそうです。
苦労がありながらもスギを活用した理由として、災害の原因の一つとなっている、荒れ果てた人工林の放置という環境問題に、
作品を通してアプローチしてみたいとの思いだったそうです。まさに、ブランド名通りの作品だなと感じました。
作者は、県下屈指の仏壇の製造直売店の職人さんです。勾玉の名の通りに、流線型で仕上げた扉と、無垢の一枚板から仕上げた点が特徴です。
通常、こうした箱モノは、張り合わせた板を利用してコストを抑えながら量産していくそうですが、
この作品は、職人たちの技術の結晶として一枚一枚の形や木目が違う板と会話をしながら、
その木が持つ癖を生かしながら組み立てたため、大変手間がかかったそうです。
この勾玉仏壇は、現代の暮らしに合った飾りやすいサイズで作成しており、
ご自身の大切にされているものを飾って頂き、多くの方の平穏や幸せの一助になれたら嬉しいとの事です。
忙しい日常の中で、しばし立ち止まって無になる時間も大切かなと思いました。
今回の作品展では、作り手の思いが伝わってくる作品が多くありました。
業種は違いますが、職人さんたちに負けないように、情熱をもって日々の業務を行いたいと改めて思いました。
■飛騨高山ものづくり実践塾 作品展「 想・創・装 – craftsmanship of hida - 」
https://hida-st.com/2020/11/07/sou-craftsmanship-of-hida/
■日下部民藝館
http://www.kusakabe-mingeikan.com/