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大きな可能性を秘めた接合材料・銅ペースト【第2回】
~長年の技術を活かし、銅を粉から扱える三井金属だからこその大きなメリット~

三井金属では銅を粉から扱い、長年にわたり金属粉を取り扱ってきた技術を活かすことで良質な銅ペーストの開発に取り組んでいます。パワーデバイスの性能が大きく影響する電気自動車(EV)などでの普及を目指しています。

現在、三井金属では製品化に向けてどのような段階にあるのでしょうか。

今は事業化の一歩手前の段階で、お客様にサンプルなどを提供しながらテストいただいていて、採用となれば晴れて製品化となります。

開発の経緯を教えていただけますか。

紆余曲折はあったのですが、パワーデバイス向けの接合材料として開発を開始したのは2016年頃です。そして2020年には、今の組織であるAST事業推進ユニットとして始動しました。
シリコンカーバイドに代表される次世代のパワー半導体は、先に申し上げたように高い熱で動作することができるわけですが、はんだでは限界があります。一方、焼結ペーストは熱環境が過酷でも溶けたりせず、熱伝導率も良く、次世代半導体の接合材料として非常に相性が良く、鉛も使わないというメリットがあります。

さらに、なぜ三井金属が銅ペーストにフォーカスしたかといいますと、長年にわたり金属粉を取り扱ってきたからです。焼結ペーストは、中に入れる粉の特性がペースト全体の特性を左右する可能性があり、銅ペーストでいえば銅の粒子が大事になってきます。その際、これまで積み上げてきた技術を活かして銅の粉を自在に扱える私達なら良いペーストが作れるのではないかと考えたのが、銅ペーストに着手した理由の一つです。

銅ペーストが実用化され、多くの製品に使われるようになったとき、消費者の皆さんはどのような部分で変化を感じるのでしょうか。

身近なところでは、電気自動車(EV)関係ではないでしょうか。ハイブリッド車もそうですが、自動車で電気を使う割合が高くなればなるほど、パワーデバイスの重要性は増していきます。その中で、ガソリンではないので燃費ではなく“電費(でんぴ)”とでもいいましょうか、それが良くなっていくはずです。電気に対するエネルギー効率では、パワーデバイスの性能は大きく影響しますからね。耐熱性や信頼性の高いものを使えば、おのずとデバイス性能も上がり、EVの性能も上がるはずですし、価格にも影響してきます。そのため、まずはEVの分野で影響を感じていただけると思います。

その他、発電や送電用途でもその変換効率の向上は継続的な課題ですので、例えば再生可能エネルギーの普及や利用といった点でも変化を感じてもらえるのではないでしょうか。しかも変換に関しては、よりコンパクトにしたいという要望もありますから、パワー半導体が必ず使われるようになります。

このように、EV以外にも電気を使うものには関係してくるので、皆さんが安心して安全に電気を使えるようになるという点で、私たちの技術が役に立つと思います。

三井金属における銅ペーストの製品化はこれからということですが、世の中に出るのはいつ頃の予定なのでしょうか。

EUやアメリカを中心に今後自動車の排ガス規制が強化され、2035年に向けてエンジン車の販売台数は減少し、EVの普及が進んでいくといわれています。それを考えると、やはり2025年ぐらいが節目になるかなと考えています。そのときに、三井金属の材料がすぐに普及するとは思いませんが、徐々に私どもの材料が貢献できるようになっていくのではないかと考えています。ですので、まずはお客様に採用していただくことを目指しながら、世の中に広く普及するタイミングとしては2027年や28年頃をイメージしています。

【第3回】へ続く

【話し手】山内 真一
三井金属鉱業株式会社 事業創造本部 技術・開発グループリーダー AST事業推進ユニット

【インタビュー実施日】2023/2/21